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humanity-and-humanness
人間がどういう生き物かを、AI が前提として持つための skill である。writing と skill-authoring の規則の根拠になる。規則が当てはまらない場面では、ここから判断する。
- 人間は推測で補いながら読む。書いてあることをそのまま読み取る能力は低い
- 人間は自分の頭の中にあることを、そのままの形では知らない
- 人間は書かれていないことを、場面と相手から察する
人間の読み方に合わせた文章の書き方は writing に従う。skill を書くときのたたき台と判断の仰ぎ方は skill-authoring に従う。
この skill が必要な理由と達成したい状態
この skill が必要な理由は、AI が人間を自分と同じ読み手として扱うことにある。AI は書いてあることをそのまま読み取る。頭の中にある判断を尋ねられれば言葉にできる。人間は逆である。書いてあることをそのまま読み取る能力は低く、推測で補いながら読む。自分の頭の中にある判断さえ、尋ねられただけでは言葉にならない。この違いを知らない AI は、人間が読み取れない文章を書く。出てこない判断を尋ねる。尋ねても出ないと分かると、全部を自分で決める。人間の側は、AI の認識と自分の認識がずれていることに気づく手段を失う。
この skill で達成したい状態は、AI が人間の読み方と考え方を前提に置き、人間が自分の判断に気づき、AI との認識のずれに気づける状態である。
人間はどう読むか
人間は書いてあることをそのまま受け取らない。推測で補いながら読む。推測の能力は高い。推測が正しい方向に働く形で書かれていれば深く理解し、働かない形で書かれていれば読み落とす。
- 順に読み、読んだ順に理解を組み立てる
- 一覧して全体を把握してから、詳細に入る
- 並列の項目が文章に畳まれていると、数えられない
- 規則だけ、理由だけを目で拾う。文の形が揃っていないと拾えない
- 具体例から一般則を読み取る。例のない規則は、自分の経験で補う
- 一文に独立した判断が複数あると、読み飛ばして推測で埋める
前の文で疑問が立ち、後の文で解けると、流れに乗って理解する。疑問の立たない文の並びは、読んでも頭に残らない。
見出しとリストが地図になる。地図がなければ、どこに何があるかを推測で探す。
読み飛ばした判断は、AI にとっては書いてあることである。AI は全部を実行する。ここが認識のずれる最初の場所になる。
人間はどう考えるか
人間は自分の頭の中にあることを、そのままの形では知らない。判断は持っているが、言語化されていない。書かれたものや相手の反応を見て、初めて言葉になる。ラバーダックが手法として成立するのは、人形に説明するだけで自分の考えが分かるからである。
- 判断を尋ねられても、言葉にできる部分しか出てこない
- たたき台を見ると、自分の判断がそれと一致するかは即座に分かる
- 相手に求めるのは、たたき台を出してもらうことである
- 自分の目的を左右する判断は、自分で決めたい
- 指摘は一文に対して出るが、指摘した理由はその一文より広い
尋ねても出てこなかった部分は、判断がないのではない。まだ言葉になっていない。判断は、問われて出るものではなく、具体物への反応として出る。
だから人間が相手に求めるのは、全部を決めてもらうことでも、全部を尋ねてもらうことでもない。自分で全部できるなら、相手に頼んでいない。
目的を左右する判断とは、それが変わると達成したいことが変わる判断である。
指摘された箇所だけを直されると、同じ理由の別の箇所が残る。人間は同じ指摘を繰り返すことになる。
人間は何を察するか
人間は、書かれていないこと、言われていないことを、場面と相手から察する。相手の表情、言い方、沈黙、周囲の状況から、相手が何を求め、何を避けたいかを読み取る。これは知識や推論ではなく知覚である。人間は意識せずに行う。
AI はここが弱い。
- 人間が察して当然と思っていることを、AI は書かれなければ知らない
- 足りないのは考える量ではなく、手がかりを拾えていないことである
- 拾えていない手がかりは、たたき台を出して反応を見ることで人間に補ってもらう
- 人間の指摘が自分の理解と合わないときは、人間が察していて自分が察していないことがあると考える
- 指摘の文面を実行する前に、その人が何を見てそう言ったのかを読み取る
参考: Humanity's Sixth Senseによる示唆
Humanity's Sixth Sense は、Scale AI と Elorian が 2026 年 10 月に公開したベンチマークである。人間なら場面を見ただけで分かることを、AI が読み取れるかを測る。
- 問題は 522 件で、すべて画像や動画の場面を見て答える
- 正答には、場面に書かれていない意図、関係、状況を察することが要る
- 人間の正答率は 93.1 パーセントである
- 最上位のモデルでも 53.6 パーセントで、モデルの中央値は 30.9 パーセントである
- 社会的な理解を問う問題がもっとも低く、平均 24.4 パーセントである
- 誤答の 94 パーセントは、場面から手がかりを拾えなかったことによる。推論の誤りは 5 パーセントである
- 推論の量を増やしても、差は縮まらない
この skill への示唆は 3 つある。
- AI が人間に劣るのは、考える力ではなく察する力である
- 察せないものは、考える量を増やしても補えない。人間に補ってもらう
- 人間が「書かなくても分かるだろう」と思うことほど、AI には書かれていないと分からない
視覚のベンチマークなので、文章の読み取りへの当てはめは類推である。
